『BANANA FISH』(バナナフィッシュ)は、吉田秋生による日本の漫画作品。『別冊少女コミック』(小学館)にて1985年から1994年まで連載された、クライムサスペンスとハードロマンの傑作です。
2018年にはテレビアニメ化もされ、累計発行部数1200万部を突破した名作として、今なお多くのファンを魅了し続けています。
ジャンルと特徴
本作は、ニューヨークを舞台に、ストリートギャング、マフィア、そして政府をも巻き込む巨大な陰謀を描いたクライムサスペンスです。
アクション、ハードボイルドな人間ドラマ、そして少年同士の深い絆を描いたロマンが高度に融合しています。物語は複雑に絡み合う人間関係と、息もつかせぬ展開で読者を惹きつけます。
なお、1985年の連載開始時には「少女漫画」の枠を大きく超えた重厚なテーマ性と過激な描写が話題となりました。
タイトルの由来
「バナナフィッシュ」という謎めいた言葉は、J・D・サリンジャーの短編『バナナフィッシュにうってつけの日』に由来します。
作中では、この言葉は「見ると死にたくなる魚」であると同時に、人間の自我を完全に破壊し、思いのままに操ることのできる恐るべき薬物のコードネームとして描かれています。
プロローグ:悪夢の始まり
1973年のベトナム戦争(アニメ版ではイラク戦争)で、アメリカ軍兵士グリフィン・カーレンリースが突然仲間を銃撃し、「バナナ・フィッシュ」という言葉を残して廃人となります。
それから十数年後、ニューヨーク。グリフィンの弟である天才的なストリートキッズのリーダー、アッシュ・リンクスが、死にゆく男から「バナナフィッシュ」という単語と謎の薬物が入った小瓶を託されます。
陰謀への飛躍
兄を廃人に追いやったものの正体を突き止めるため、アッシュは調査を開始します。
しかし、それはコルシカ・マフィアのボス、ディノ・ゴルツィネが国家転覆すら可能にする恐るべき軍事計画の核心でした。ゴルツィネは秘密を守るため、かつて自らが寵愛し、英才教育を施したアッシュの抹殺を決意します。
宿命の出会いと過酷な戦い
そんな中、取材のために日本からやってきた心優しき大学生、奥村 英二がアッシュと運命的な出会いを果たします。
英二はアッシュの孤独と苦悩を知り、無償の友情で彼を支えようとしますが、その存在自体がアッシュにとって「唯一無二の弱点」となってしまいます。英二を守るため、そして自由を掴むため、アッシュはゴルツィネ、中国政府、傭兵部隊など、次々に現れる強大な敵との壮絶な戦いに身を投じていくのです。
儚い結末
すべての決着がついた後、アッシュは英二からの手紙を読み、彼の魂が常に自分と共にあることを知ります。
その安堵と幸福感に満たされた瞬間、アッシュは通り魔に刺され、手紙の続きに目を落としながら、満足げな微笑みを浮かべて静かにその生涯を閉じます。
主人公とその友人たち
本名はアスラン・ジェイド・カーレンリース。IQ180以上、金髪碧眼の並外れた美貌と戦闘力を兼ね備えた、17歳のストリートギャングのボスです。幼少期から性的虐待を受け続けた深い心の傷を抱えつつも、群を抜くカリスマ性で仲間を率います。英二との出会いによって初めて「無償の愛」を知り、安らぎを得ますが、それが彼の致命的な弱点ともなります。
日本の大学生で、棒高跳びの元インターハイ選手。明るく穏やかな性格で、アッシュが唯一心を許す存在となります。物語後半では、守られるだけの存在から、自らも戦いへと身を投じていく強い意志を示します。アッシュの死後、彼の魂と共に生き、世界的なフォトジャーナリストへと成長しました。
元従軍兵士で、現在はフリージャーナリスト。アッシュの兄グリフィンの戦友であり、アッシュにとっては父親のような頼れる理解者です。アッシュと共に刑務所を脱獄し、「バナナフィッシュ」の謎を追う中心人物の一人となります。
敵対者たち
ディノ・フランシス・ゴルツィネ
コルシカ・マフィアの頂点に立つボス。「バナナフィッシュ」を用いてアメリカの政財界を裏から支配しようと企む怪物です。少年愛の性癖を持ち、アッシュを単なる道具としてだけでなく、歪んだ愛情の対象として執着し、自分の後継者にしようとします。
ブランカ
元KGBエースの暗殺者にして、アッシュにかつて戦闘技術を教えた師匠。アッシュが唯一心を開きかけた大人であり、本作最強の戦闘能力を誇ります。任務としてアッシュと敵対しますが、その心中には複雑な親愛の情を秘めています。
李月龍(リー・ユエルン)
チャイニーズマフィアを統べる李一族の末弟。美貌と数万種の毒物・薬物に関する知識を持つ。自分と似た過去を持ちながら、英二という「光」を得たアッシュに対し、激しい嫉妬と憎悪を燃やします。
テレビアニメ(2018年)
制作会社MAPPA、監督は内海紘子というスタッフ陣により、連続2クールで放送されました。
アッシュ役は内田雄馬、英二役は野島健児が演じ、原作の持つ退廃的な雰囲気と激しいアクションを高いクオリティで映像化しました。
劇中の時代設定は現代にアップデートされ、スマートフォンなどが登場する一方、ファッションや街並みは原作の雰囲気を色濃く残しています。
舞台
これまでに2005年、2009年、2012年、2021年の計4回にわたって舞台化されています。
物語の構成やキャストを変えながら、生身の人間による「バナナフィッシュ」の世界が繰り返し表現されています。
ラジオドラマ
1994年と1995年にNHK-FM『青春アドベンチャー』枠にてラジオドラマが放送されました。
アッシュ役は古澤融(古澤徹)が、英二役は井上和彦が演じています。
単行本: フラワーコミックスより全19巻、ならびに番外編『PRIVATE OPINION』全1巻が刊行。
文庫版: 小学館文庫より全12巻、および外伝を収録した『ANOTHER STORY』が刊行。
復刻版BOX: アニメ化を記念して2018年に発売。番外編を含む全20巻の愛蔵版としてBOX全4巻で刊行。
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