小林さん（こばやしさん）

本作の人間側の主人公は、26歳の独身女性で、システムエンジニアとして「地獄巡商事 北千住事務所」に勤務しています。彼女はマンションで一人暮らしをしており、家族には両親と二人の弟がいます。名前は明かされておらず、周囲からは苗字で呼ばれています。

彼女の生活は仕事に追われる日々で、疲れ果てていました。しかし、ある日酔っ払って電車を乗り越し、迷い込んだ山の中でトールと出会い、助けたことがきっかけで生活が一変します。酔った勢いもあったとはいえ、行き場を失ったトールを迎え入れ、ドラゴンたちの面倒を見ながらも、優しさと度胸を持って接する彼女は、ドラゴンたちから信頼を寄せられる存在となります。

彼女はフェミニンな要素が少なく、トールやイルルからは初対面時に男性と間違われることもあります。特徴的な三白眼気味の目つきは、トールから「死んだ魚の目」と評されることも。カンナからは親のように慕われていますが、母親というより父親のように思われている節があります。貧乳にコンプレックスを抱いており、トールやルコアの巨乳に嫉妬することもあります。

基本的にはズボラで引っ込み思案な性格で、私生活では気怠げに過ごしていますが、酒好きで酔うとテンションが上がり手が付けられなくなります。メイドオタクであり、西洋のクラシックなメイドや執事に強いこだわりを持っています。休日は家で過ごすことが多く、苦手な食べ物はひじきと茄子です。トールが来る前の家は、コンビニ弁当の容器やビールの空き缶が散らかっていました。仕事のストレスを晩酌で発散するため、二日酔いは日常茶飯事で、姿勢の悪さから慢性的な腰痛にも悩まされています。自動車免許は持っていますが、自家用車はありません。

職場では「やる気があるわけでもない底辺」と自称していますが、同僚からは「有能で大切な会社の柱」と評され、バレンタインデーには多数のチョコを贈られています。労働環境には不満を抱きながらも、社畜気質に染まっており、「一日8時間は働かないと落ち着かない」と口にしています。エルマが企業体質改善を要求した際には、プロジェクトを成功させて主任に昇格し、異世界の者たちの「守護者」の役割を任されます。

高校時代、メイド服を着た姿を家族に披露した際に酷評されたことで、「自分に可愛い服は似合わない」と思い込み、現在に至るまで男性的な服装に傾倒しています。抑え込まれたコスプレ願望や可愛さへの憧れが、メイドオタクとしての彼女を形作っています。トールに対しては、メイドのなんたるかを説教するものの、サブカルチャーとしてのメイドを否定するわけではなく、トールのメイド姿も一つの形として受け入れています。

トールや異世界の住人たちと共に過ごす中で、様々な価値観の違いや葛藤を経験しながらも、それを受け入れ楽しむようになり、トールの存在は少しずつ大きなものとなっていきます。

アニメ版では、勤務先の社名が「地獄巡システムエンジニアリング 瀧ノ口事務所」となっており、トールとカンナが同居したことで部屋が狭くなり、別のマンションに引っ越して一室を二人の個室として与えています。ストーリーが進むごとにトールとの絆が深まり、トールの父親であるダモクレスに対しても命を顧みず説得に挑み、騒動の終息後、トールとカンナを連れて実家の巽町へ帰省し、両親に紹介しています。

スピンオフ作品『カンナの日常』では、トールとともに母親のような目線でカンナの成長を見守っています。『エルマのOL日記』では、会社に欠かせない戦力となったエルマを「逃さない」とまで言い放つ社畜ぶりを見せています。